Q1)開運の印鑑、吉相印・印相体とは何でしょうか


A)業者さんが商売方法として近年創作したもので、昭和40年代以降広まりました。 印相体は当初、開運印鑑専門の書体として創作され、吉相体は印相体の名前を変えたものです。 当時は開運印鑑と呼ばれる事はほとんどなく、「印相印」と呼ばれておりました。

Q2)印鑑と開運について昔からの言い伝えを教えて下さい

A)ハンコで開運になるという言い伝えはありません。
書道等に用いる落款印などで吉祥句を印鑑にする事や、通常の印鑑に吉祥模様を彫る事は一部ありましたが、今売られている開運吉相印、印相体などとは全く関係ありません。
開運、幸運、吉相の印鑑はあくまでも業者さんが近年商売方法として考案されたものです。

Q3)開運吉相印とは具体的にどんなハンコでしょうか

A)まず、字に大きな特徴があります。
篆書体という書体を変形させて印面に隙間無く彫るのが特徴です。
書法(書道)を無視した異様な字ですので、印章(印鑑)技術や書道の分野では通用しません。
また、印材はそれまでの利便性や美しさ、「古き良き時代」のハンコを否定した材料で売り出されました。
当たり(上下のしるし)や太枠細字の篆書体や小判型印鑑などを否定し、角印は過度に丸たもので象牙は欠けやすい横目象牙など変わった素材が次々に登場してきました。

Q4)印鑑によって開運になる事があるのでしょうか。

A)印鑑と運勢(開運)は全く関係ありません。
ですので、ハンコで幸運になるとも不幸になるとも何も言えません。
ただ、有るのか無いのかかと言われれば、印鑑と開運は関係ありませんので「印鑑では開運にならない」と言えます。
余談ですが、「開運の印鑑で幸せになるのは、買ったお客様ではなく、売ったハンコ屋だ」 という笑うに笑えない話があります。

Q5)でも、開運のハンコを使ってからいい事ばかりありますが

A)個人のジンクスとして心の中で思う事は自由ですが、印鑑と運勢は無関係ですのでハンコを買って(作って)開運になったというのは偶然や錯覚に過ぎません。
開運印鑑に用いられる印相体は、伝統も言い伝えもない書体ですので、開運印鑑は単なる「開運グッツ」です。
例えば、ハワイに旅行した時知り合った人とその後結婚したとします。
その結婚はハワイ旅行がきっかけと言えるでしょう。
それと同様、開運印鑑を買った時に知り合った方と結婚したとします。
それは印鑑を買った事が結婚に至ったと言ってもいいと思います。
   しかし、その結婚に至る要因は開運印鑑の魔法の力などではありません。
別にハンコに限りません。
    洋服でも食品でも同様です。
単なる偶然や過程に過ぎません。
「言い伝えなき開運に御利益無し」です。

Q6)それにしては大半のハンコ屋さんが印相、吉相体を扱っていますが


A)開運商法が登場してから開運などに関する印鑑はよく売れています。
それに便乗して今までの印鑑店が右へならえした結果です。
◆開運専門に方針転換したお店。
(開運印鑑専門店を俗語で「印相屋」さんと言います)
◆通常の印鑑を求める方には普通のハンコ・開運を信じる人には開運の書体でという使い分けをしているお店
◆脱サラして彫刻機械を購入して新規参入したお店
など、様々な人たちにより開運商法は広まっていきました。

Q7)開運(吉相、印相体)の印鑑をつくろうと考えています。
本気で開運を期待している訳ではないのですが、なんとなく普通の印鑑より良さそうな気がします。
実際はどうなのでしょうか。


A)断言します。
いいハンコを求めるのであれば絶対に普通の印鑑にするべきです。
開運(吉相・印相書体)印鑑はQ3で書いた通り、異様なハンコです。
印鑑彫刻技術の世界、「文字の美」の分野では通用しません。
下品な表現になりますが、わかりやすく言えば「ゲテモノ」の印鑑です。
(きちんとした会社の印鑑、国・地方公共団体の印鑑にはまず印相印はありません)
ハンコ屋がハンコを売りつける為に創作した商法ですので、慣習・伝説・言い伝えではないからです。
私の言葉を信じられない方は、開運印鑑販売店さんに言い伝えなどの出典を聞いてみるといいと思います。
昭和になって出版された「トンデモ本」はありますが、開運印鑑について記した古文書などはありません。

Q8)しかし、技術競技会の受賞者が開運印(吉相・印相体)を販売していますが

A)これはある意味、開運の印鑑(書体)は技術の世界で通用しない事を逆に証明していると言えます。
まず、その技術競技会がきちんとした会である事を前提として書きます。
その受賞者の出展作品を見て下さい。
開運印鑑の書体である印相体(別名 印相体)での受賞は絶対にありません。(←この事は非常に重要です)
きちんとした競技会であればその様な書体での受賞はあり得ません。
もちろん、出展者は「開運印鑑は無価値な商売道具」という事がわかっていますので、商売では開運印鑑を販売しても、技術競技会にその様な書体の作品を出品する事はありません。
プロ対プロでは通用しませんし、第一出品なんかしてしまったら笑われてしまいます。

Q9)印●学について教えて下さい

A)実は事情があって一部を伏字にしています。
答えですが、その様な学問はありません。
正確に言いますと、商標登録上ではあるようです。
その関係で一部伏字にさせていただきました。
これでおわかりだと思いますが、開運などに関する印鑑は全て商売道具なのです。
職業訓練校として国から認可されている印鑑の学校(神奈川県)では、印●学などは教えていません。
その学校で教えている内容はもちろん商標登録などされていません。

Q10)印鑑業界の中心的な組織はありますか。

A)はい 公益社団法人 全日本印章業協会です。

Q11)その加盟店は開運の書体は扱っていないのでしょうか

A)答えにならないかも知れませんが、協会加盟店の発行する証明書(御印章彫刻証)には印相体(吉相体)は載っていません。

Q12)しるしのある印鑑は縁起が良くないといいますが

A)典型的な開運商法の宣伝文句(※)です。
捺印時に印面の上下がわかりやすい様にする為に昔からある便利なしるしです。
「当たり」「さぐり」「指型」とも言い、金属が埋め込まれているものは丹と言います。
※典型的な開運商法の宣伝文句とは 「印鑑は自分の分身(又は自分の体)であるので、傷の付いた印鑑は良くない」という話の事です
ハンコは非常に重要な役割をする大切な物ですが、自分の分身とか自分の体などという言い伝えは全くありません。
また、「しるし」を否定する為にあえて「傷」という聞こえが悪い表現が使われました。

Q13)重要書類に捺印する時に印面をよく確認し、その時に一息ついて「本当に捺印していいのか」を考える為にも、しるしの無い印鑑がいいと聞きましたが。

A)これはどこにも「開運」と書いてありませんが、実はこれも開運商法の人が考えだした宣伝文句です。
書類への捺印はよく考え慎重にする事は非常に重要です。
しかし、それと「わざと不便なハンコを使う事」は別問題です。
よく考えてみて下さい。
重要書類に捺印をする場合は、例え当日であっても捺印前に考えてみるものです。
印鑑に朱肉を付けて「いざ捺印」という段階になって慌てて考えるべき事ではないのです。
それを、「一息付いてよく考える」という名目で、わざと不便な印鑑を使うべきなのでしょうか。
しるしのない印鑑で印面の上下を探しながら、同時に書類の重要性について考えるべきなのでしょうか。
頭が混乱しませんか?
ハンコに気をとられて大切な事を忘れたりしませんか?
そもそも、上下のしるしが付いていたら、書類の重要性も考えずに、気軽に捺印してしまうのでしょうか?
それに、開運・吉相・印相体は字が変形されて隙間が無いので、よく見ても上下逆さまに押してしまう事が結構あるのです。
書類への捺印を慎重に行うのであれば、使いやすい印鑑を使って下さい。
尚、昔の印鑑はほとんど「しるし」が付いていました。
「しるし無しの印鑑を使い一息付けてよく考える」という話に「開運・吉・福」という言葉はどこにも出てきませんが、セールストークに左右されず、ご自分の意思で「上下のしるし」の有無を決めるべきです。

Q14)印相体・吉相体は彫る技術が難しく偽造されにくいと聞きますが

A)全く逆です 理由は
1)筆感の無い太いゴシック体である (高度な彫刻技術は不要です)
2)書道の概念が無視されている。
3)どれが上手でどれが下手か判別出来ない
1=太いだけの単調な線は彫るのも真似るのも簡単です。
   2と3は同じ意味と考えていいでしょう。
昭和にハンコ屋が創作した書体ですので、「書の美」としてのルールや概念や基準は無いのです。
印章技術者にとって字典は必需品ですが、きちんとした字典に印相体は絶対に載っていません。
太細の強弱が無いゴシック体で、しかも上手下手の基準が無いので彫るのは簡単です。
(しかし、それ以前に現在の開運印鑑はほとんどが彫刻機械で作られていますので、技術は無くても作れます)

Q16)本気で開運を信じる訳ではありませんが、印鑑を作る際は、やはり姓名判断をしてもらい方位などを見てもらいたいのですが

A)姓名判断や方位は分野外ですので、そちらの言及は控えます。
但し、印鑑と姓名判断や方位は全く関係ありません。
開運印鑑の基本である印相体そのものが、古文書などの出典はありません。
(昭和に創作された書体ですので当然ですが)
ですので、ハンコを作る時に見てもらう必要はありません。

Q17)横目象牙が最高級の象牙印鑑と聞きましたが


A)1本の牙からたくさん作れない断裁の仕方をしてありますので確かに高価ではありますが高級品ではなく、欠け易い印材です。
古くから象牙が印材に使われてきた理由の一つに「欠けにくい」という特徴がありますが、横目象牙はこの重要な特徴を無視した開運印鑑と併せて売られた印材です。
通常は象牙の向きに倣って印材を加工しますが、横目象牙は横方向に印材をとります。
象牙の断面は木の年輪の様になっていて、横目象牙は印鑑の胴体に''年輪''の「輪」が現れます。
この輪に開運商法は名前や宣伝文句を付けて販売しています。
印鑑の材料は大別すると「木材」「牛の角」「牙」ですが、全て「天然繊維の流れ」があります。
その「繊維の目」に逆らって彫る事になるので欠けやすいのです。 (見える繊維ではありません)
近年、開運印鑑業者さんが考えだした印材で昔はありませんでした。

Q18)太い枠の印鑑は枠が壁になり運気が入らないいけないハンコだと聞きましたが

A)開運業者さんが創作した話で、全くの嘘です。
嘘というのは「いけないハンコ」という事についてです。
運気については繰り返し書いている通り、ハンコとは無関係です。
太枠の印鑑と言うのは、周りの枠を太くして字(篆書体)は細くするタイプの事を指します。
わかりやすく太枠と書きましたが、印章用語では「中輪(細字)」といいます。
40年以上前には多く見られた「太枠と細字で調和のとれた取れた美しいハンコ」です
篆書体は筆が一般的に用いられる以前の書体です。 (陶器に文様を書くなどで、筆の存在はありました)
簡単に言えば「棒で字を書いていた時代の字」ですので、筆感を出さずに彫る細字の篆書体は本来の篆書体に近い姿なのです。
そして印影全体としての調和をとる為に、枠を太くして美的バランスをとるのです。
通常の使い方であれば、印章は枠から欠けや磨耗が起こります。
太枠細字の印鑑は枠が欠けにくい上に、美的調和もとれている素晴らしい印鑑なのです。
高齢の方の(手彫りしか無かった頃の昔に作った)印鑑を見る機会があれば是非見せてもらって下さい。
太枠細字の篆書体の印鑑をお持ちの方は結構多いと思います。
では、昔の人はみな太枠細字の印鑑が原因で良くない事が起こったのでしょうか。
そんな事は無いですよね。
でも実際に良くない事が起きたですって?
それではQ5を読んでみて下さい。
単なる偶然です。

Q19)吉相体、印相体は文字が枠に多く接していて欠けにくいと聞きましたが

A)枠に文字がたくさん接していれば欠けにくい感じがすると思われるでしょうが、実際欠ける場合は文字以外の部分から欠けてくるのは、枠に接する箇所が多くても少なくても一緒です。
「枠に文字が多く接すると欠けにくい」というのは机上の空論です。
枠が欠ける主な原因は摩耗と落下です。
落下は不注意ですが、摩耗は使用頻度が多い場合は防ぐ方法がありません。
そこで、私用頻度の高い法人用印鑑は通常外枠を中輪(太目の枠)にして摩耗による欠けを防ぐのが一般的でした。
しかし、開運商法では太枠・細字はQ18に書いた通りいけない印鑑とされています。
耐久性に難がある上に、デタラメばかりです

Q20)継ぎ足し印はいけないと聞きましたが

A)その様な事は全くありません。
   そもそも「継ぎ足し印」という種類のハンコはありません。
牙次印(げつぎいん)、先継印などという伝統的な印章を、わざと印象悪く感じる名前に変えて説明したものです。
水牛(または牛角)の先端に象牙を付けた印鑑で、昔は普通に使われていました。
印章の傷みは「磨耗」と「欠け」です。
その磨耗と欠け防止に一番適している印材は象牙ですが、1本まるごと象牙では高価になってしまう為、水牛の角の先端(印面)に象牙を付けた印鑑です。
先端を象牙にしてハンコの命である印面を磨耗と欠けから守る実用性に適した素晴らしい印鑑です
(今ではオーダーメイド品以外では印材が作られていない為、新品の印材は高価になっています)

Q21)開運については気にしていませんが、フォント選択の一部として印相体、吉相体を検討してみたいですが、いかがでしょうか。

A)開運について関心が無い方でも、印相体・吉相体の様な書体を「何となくかっこいい」と考え、「その様な印鑑を作って下さい」 という依頼は実店舗を運営しているとたまにあります。
これは開運印鑑商法が全国的にはやってしまった事が原因です。
買い物は本人が買いたい物を買うのが当然ですので、アドバイスは出来てもそれ以上の事は言えません。
しかし、そのような印鑑を作る場合であっても是非次の事を知ってから検討してみるべきだと思います
開運吉相(印相体)とは「開運の御利益」を演出する為に、あえて書法を無視して歪(いびつ)に創られた伝統の無い字なのです。
ハンコは字が命です。
例え象牙の印鑑であっても、字が書道で通用しない歪(いびつ)な文字であれば価値はありません。
印章文字の美を競う美術競技会で、印相体が受賞された事はありませんし、今後も受賞される事はありません。
これらの事を踏まえてきちんと考えるべきです。

Q22)印鑑以外の開運や家相、方位、名前の字画占いもいかがわしいものなのでしょうか

A)ハンコ以外は分野外になりますので申し訳ございませんが言及できません。
誤解を招かない様に私見も控えます。
ただ確かな事は、「印鑑と開運、家相、方位、名前の字画占いは全く関係ない」という事です。
全て商売方法として結び付けているに過ぎません。
「印鑑の文字や素材(印材)によって運勢が変わる」と説いている古文書もありません。

Q23)ずばり開運の印鑑(印相体・吉相体)はインチキなのでしょうか


A)断言します 全てインチキです。
「ほとんど」ではなく全てインチキと断言します。
99%ではなく、100%インチキです
昭和40年代にハンコ屋がハンコを売りつける為に創作した商法ですので、慣習・伝説・言い伝えではないからです。
私の言葉を信じられない方は、開運印鑑販売店さんに言い伝えなどの出典を聞いてみるといいと思います。
まれに「印判秘訣集が開運印鑑の原点だ」というお店があるようですが、印判秘訣集は花押の本であり、開運印鑑はもとより、印相体の事は全く触れられておりません。

Q24)開運の印鑑といっても名前や説明がいろいろ違うみたいですので、一概に全てインチキと言ってしまうのはいかがなものでしょうか。

A最近、吉相体などと言われる事が多いですが、印相体の呼び名を変えただけで、歴史も伝統もありません。
(繰り返しますが、印相体は昭和になってから創作された書体で、吉相体は印相体の名前を変えただけです)
日本の印鑑に使われる基本の6書体(篆書、隷書、楷書、行書、草書、古印体)も細かくは分けられますが、書法、印章技術の理屈は大枠では同じです。
しかし、商売道具としていい加減に作られた開運の書体はお店ごとに主義主張が異なって当然です。
書体が自由に選択できる印章技術競技会であっても、印相体は絶対に出品されません。
書体そのものがデタラメである事を印章技術者は知っているからです。
流派など細かい事は関係なく全てがインチキです。

Q25)インチキという根拠を説明して下さい。

A)今までの問答が全て答えですが、重ねて説明します。。
例えば豚肉を牛肉と偽って販売するのは明らかにインチキと言えるでしょう。
それと同様、プラスチックの印鑑を象牙と偽って販売するのもインチキです。
しかし、「開運の印鑑(吉相体・印相体)を売る事のどこがインチキなんですか?」
「もしかしたら本当に開運するかも知れないじゃないですか!」(←Q5参照)という声もあるかも知れません。
しかしそれでも私は私は声を大にして「インチキ」と断言します。
ハンコと運勢は関係ない事は重ねて説明した通りですが、仮にいいハンコであれば印鑑に開運や福、という言葉を付けて販売している事にこれほど強く批判はしないと思います。
    (いずれにせよいかがわしい事には変わりありませんが)
しかし、開運に関する印鑑はいい印鑑ではありません。
それどころか普通の印鑑でもありません。
お店により主義主張は違いますが、どれも共通な事は異様な文字である印相体です。
開運の御利益を演出する為にわざと字を歪(いびつ)にした変な書体の印鑑なのです。
書体と書きましたが、これを書体とか字とか表現していいのか疑問が沸くほど異様なものです。
印鑑の価値が下がるのは言うまでもありません。
この様な変な物に「開運」とか「吉」「福」などの言葉を併せて販売する事。
まさにインチキそのものです。
近年商売方法として創作された「わざと変形させた字」に昔からの言い伝えなど何もありません。
それをあたかも「縁起がいい」「いいと言われています」などと昔から言い伝えられてきたかの如く宣伝している事。
宣伝の強弱こそあれ全てインチキです。
もちろんその宣伝文句は真っ赤な嘘です。

 Q26)ほとんどのお店で開運(印相体のみも含む)の印鑑がありますが、ここに書いてある「インチキという話」のどちらを信じればいいのでしょうか。

A)ここまでの説明をお読みいただければ、おわかりいただけるかと思います。
賢明な人であればインチキである事は既におわかりいただいているかと思います。

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