手彫り印鑑の資料 (藩札と龍刻)

これは印章店でよく用いられる商品を入れる袋です。
右の大きな袋の右上と左下に描かれているのは龍の文様です。
日本や中国では龍の文様は珍しくありませんが、印章とも深い繋がりがあります。

一方、こちらは江戸時代のお札です。
ところどころ印影が見られますが、印影以外の彫刻部分でも印判師と深い繋がりがあります。

袋の写真とは多少異なりますが、龍の模様は共通しております。
明治になり藩札が廃止され、多くの藩札彫刻師が印判師に転じたとされています。

このこれは明治中期の手彫り印鑑の印影です。
ここからは私見ですが、この手彫り印鑑は江戸時代の藩札彫刻師の流れをくんだ印判師が
彫ったものと思われます。

同じ印譜から他の印影です。
この細密な彫刻をみますと、江戸時代の藩札彫刻師の技術が確実に受け継がれていると
思われる素晴らしい印影です。
左右に龍が彫られていて、周囲には雷紋も彫られています。

ミリ以下、ミクロの技術は見る人を唸らせるほど素晴らしいものですね。

これは周囲に雷紋が彫られた明治中期の手彫り印鑑です。
雷紋というのは吉祥模様です。
「吉祥模様」=「縁起のいい模様」と考えていいと思いますが、今現在、巷で言われている
いわゆる開運印鑑とは全く異なります。
それは何と言っても彫られている文字です。
きちんとした篆書体であり、今巷の開運印鑑は印相体(別名、吉相体)で彫られています。
印鑑で重要なものは、何と言っても彫られている文字です。
その文字がきちんとした文字(上の写真のようなもの)でなければ、意味が無いと言って過言では
ありません。
ちなみに、印相体、吉相体といのはこの時代にはありませんでした。
(印相体が創作されたのは明治後期と言われています)

上の説明から続きますが、印相体(吉相体)などという美的観点や篆書体の正しい作風を
無視して商業的な嘘を混ぜて創作された書体が縁起のいいはずがありません。
縁起を語るのであれば昔からあるきちんとした篆書体であるべきです。
という事で、強いて言うのであれば、このページの様な印影こそが開運印鑑というべきであり
印相体などというゲテモノは逆に縁起の悪い印鑑と言えるのではないでしょうか。
嘘を混ぜて美的センスを除外した書体は縁起のいいはずがありません。
あえて縁起を語るのであれば「縁起が悪い」と言えると思います。
手彫り印鑑