明治10年の「内国勧業博覧会」の漆喰細工部門での「褒版」です。
当時の審査官の角印はどれも印章技術者にとっては興味深いものばかりです。
中央写真の左側は明治維新の政治家として有名な大久保利通のものです。
これは古印体に近い隷書体です(古印体は隷書体を起源としています:草書古印体などを除く)
「利」という字は書法では「刂」(りっとう=刀)で字源を忠実に再現しております。
今はお客様から「利」という字が関係する印鑑の注文でこの様に彫ると「誤字ではないでしょうか?」と
苦情がきてしまいますのでこの様なかたちにはほとんどしません。
この様な昔の印影は見ているだけでも参考になります。
この賞状(褒版)の日付は明治10年11月20日とあります。
大久保利通が暗殺されたのが明治11年5月14日。
何とも感慨深いものがあります。
長八美術館 【伊豆】
同業者親善旅行の話題が続きますが、今回は伊豆の松崎町にある長八美術館です
ここは江戸時代の左官職人 入江長八さん(雅号は天佑または乾道)に関する美術館です。
「江戸時代の一人の左官職人さんで美術館を?」とお思いの方
ここは左官技術はもちろん、左官の芸術を極めた職人さんの美術館ですので、お近くに来た際は
是非立ち寄って見てはいかがでしょうか。
松崎町役場のサイトからの抜粋ですが、入江長八は1815年伊豆の松崎町に貧しい農家の長男として
生まれましたが将来は腕をもって身をたてようと志し、12歳の時に左官棟梁のところに弟子入りし
19歳の時に江戸へ出て絵を狩野派の喜多武清に学んだとあります。
12歳といえば今で言う小学生。
時代が違うとはいえ同じ日本人として、約200年前の人は偉大だなと感心させられました。
展示品に関する説明は誤った事を書いてしまってはいけないので省略しますが、下の写真をご覧下さい。
1枚は漆喰の壁写真ですが、他は絵です。
左官職人さんが絵を?と・・・
実はこれ 写真ではわかりづらいかも知れませんが、鏝(コテ)を使った左官技術で書いた絵なのです。
実物を見ますと立体的なのがわかります。
美術館には左官作品だけでなく、資料も展示してあります。
素晴らしい左官作品に見とれてしまいましたが、ハンコ屋としてはこちらの資料も見入ってしまいました。